VRunner

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VRアニメーションの可能性は無限大。VRでしか表現出来ない面白さを求めて

VRアニメーションの可能性は無限大。VRでしか表現出来ない面白さを求めて

VRアニメーションの可能性は無限大。VRでしか表現出来ない面白さを求めて
フリーランス VR・3DCGアーティスト
伊東ケイスケ

今年、VRアカデミー卒業直後に制作したVRアニメーションが、8月開催のヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映されるという快挙を遂げたVR・3DCGアーティストの伊東ケイスケさんにインタヴューしました。

―第76回ヴェネツィア国際映画祭VR部門の「VENICE VR」にてプレミア上映された作品「Feather」をご紹介いただけますか?

まず、今回の招待上映に至った経緯ですが、VR映像プロデューサーの待場勝利さんからのお声がけがきっかけで、その時に考えていた企画をヴェネチア国際映画祭が実施しているプログラム『ビエンナーレ・カレッジ』に送ったところ、最終選考となる12の作品企画に選出されました。アジアからは唯一でした。プログラムに参加するためにヴェネチアまで行き、およそ1週間、現地で企画をブラッシュアップしました。帰国後、いただいたアドバイスをもとに作品を完成させ、今回の『ビエンナーレカレッジシネマVRセクション』で上映していただけることになりました。作品は、VRで体験するインタラクティブなアニメーションで、音楽はピアニストの森下唯さんによる豪華なフルオーケストラです。小さな人形の少女がバレエダンサーになる夢を目指していく物語で、舞台は、古い屋根裏部屋にひっそりと置かれているドールハウスで繰り広げられます。体験者はコントローラーを持つと、それがVR空間内での自身の手になります。そして、主人公の女の子に『羽』を渡してあげることで物語が移り変わっていきます。少女が何か困難にぶつかった時、体験者の目の前に『羽』が現れます。『羽』は、『勇気』や『はげまし』の意味を内包するシンボルです。少女は体験者から『羽』を受け取りながら、すくすくと成長していき、バレエダンサーになる夢へと突き進んでいきます。しかし、そのまま全てがうまくいくとは限りません。それがどういうことかは、実際に作品を体験していただければと思います。

―今回の作品の目指した方向性や特に力を入れた点をお聞かせください

一般的に人々は『受け取ること』が自身の幸せにつながると考えます。しかし、私たちは、『与えること』こそが本当の幸せをもたらすのではないだろうか、ということを、主人公の少女とのやり取りを通して体験者に伝えたいと思いました。また、力を入れた点は、ストーリーテリングとインタラクションの関係についてです。話の流れに抑揚を持たせるのは物語作りの基本的なところだと思いますが、それにインタラクションを絡めてどう違和感なく、そして無駄なく表現していくかが肝だったように思います。物語に関係のないインタラクションを入れてしまえば、それはアニメーション作品ではなく、ただ単にインタラクションが楽しいゲームのようなものになってしまう恐れもありました。考えた結果、インタラクションは『羽を女の子に渡す』という1つに絞りつつ、物語の状況によって女の子のリアクションに変化を持たせ、そのことがストーリーに繋がっていく仕組みにしました。このことにより、シンプルで分かりやすいインタラクションでありながらも、同時に物語全体にテーマ性を持たせることができたのではないかと思います。

―今回の作品制作を終えて、改めて新しい発見や気づきはありましたか?

私は普段、制作を自分一人で行うことがほとんどで、今回初めてチームでの作品制作を経験しました。ヴェネチアでのプログラムには私を含めた3人で参加しました。プログラムでは当然、全てが英語で行われますが、私は英語がほぼ話せないので、株式会社シネマリープ代表の大橋哲也さんに同行していただき、通訳やプレゼン、マネジメントを助けていただきました。またプロデューサーの待場さんには、私がヴェネチアの講師の方々から厳しい指摘で頭を悩ますたびに、私の作品への想いを汲みつつ的確なアドバイスで支えていただきました。ヴェネチアの何もない孤島で一週間缶詰めになり、毎日企画を壊し、再構築し続ける作業は信じられないくらい過酷な時間でしたが、アイデアはそのような環境で生まれやすいものなのだと実感することができました。プログラムの最終日、他の参加者や関係者の方の前でブラッシュアップの成果をプレゼンしたのですが、お二人の助けがあったお蔭で、無事、盛況を得ることができました。もしチームの1人でも欠けていたら、今回の結果は実現しなかっただろうと思います。仲間と協力した制作の楽しさ、面白さに気づくことができました。

―VRを活用したCGアニメーション制作の面白さや魅力は何ですか?

これは展示会などでVR作品を出品した場合に限りますが、お客様にVRアニメーションを体験していただく時には一人一人への接客が必要になります。その際はお客様の様々なリアクションを直接見ることができる上、どのシーンでどう感じたかなど、フィードバックもその場でもらえることが多いです。VRの場合、人によって感じ方が様々なことが多く、それらを知ることがVR体験に関する学びに繋がってくると思います。3DCGアーティスト目線から言えば、作ったモデルやキャラクターアニメーションを隅々まで見てもらうことができる満足感もあります。通常のムービーですと、せっかく作った裏側が映らないので作った意味がない、なんてことはざらにありますが、VRであれば隅々まで見てもらうことができます。その分、隅々まで作り込まなければいけない大変さはありますが…。他にもインタラクションが使えること、立体音響であること、あげていけばキリがありません。

―今後の目標やチャレンジしたいことを教えてください

もっとストーリーテリングを学びたいですし、そのための感性も磨きたい。もっとプログラムやシェーダも自在に書けるようになりたい。英語も…。チャレンジしたいことは常に山積みです。インタラクションのあるVRアニメーション自体、世界的に見てもまだあまり存在していませんから、可能性は無限にあると思っています。手探りしながらVRでしか実現できない面白さを発見していき、それらを新作に繋げていきたいと思います。

伊東ケイスケ|KEISUKE ITOH
多摩美術大学グラフィックデザイン学科アニメーション専攻卒。2012年よりフリーランスの3DCGアーティストとして活動を開始。近年は、VR作品の制作も行う。CG特有の冷たさを感じさせない、あたたかな表現を追及している。 [ウェブサイト] http://keisukeitoh.com

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