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VRマーケットを牽引するトップランナーのインタビュー誌

光技術を使って社会課題の解決や社会の進歩に貢献

光技術を使って社会課題の解決や社会の進歩に貢献

光技術を使って社会課題の解決や社会の進歩に貢献
株式会社QDレーザ 代表取締役社長
Ph.D(工学博士)菅原 充

通信・産業・医療・民生用の広い分野で新しい半導体レーザソリューションを届ける、レーザ技術の先駆的ベンチャーの株式会社QDレーザの菅原代表に話を伺いました。

会社名のQDレーザはどういう意味なのですか?

QDというのは、半導体の「量子ドット」です。量子ドットを英語でクァンタムドット(Quantum Dot)と言って、それを短縮したのがQDになっています。半導体の凄く小さな粒子を使ってレーザを作るということをずーっと研究しているんです。それを事業化するために創った会社がQDレーザです。半導体レーザは照明デバイスのLEDとは違うものです。LEDは、液晶のバックライトや電球とかの照明あるいはディスプレイの技術です。一方半導体レーザは凄く機能的なデバイスで4つの機能があります。伝えるっていうこと(通信)、切ること(加工)、センシングすること、そしてディスプレイ。まずは光通信から始めましたが、その分野だけではなく、レーザの機能をもっと活かして色んなところに発展させて行こうと目指してここまで歩んできました。我々は『光で世界は進化する』を誇りとメッセージとして、光を使って社会的な課題を解決したり、社会の進歩に貢献したりすることを目指しています。

網膜に超小型プロジェクターで直接映像を投影する技術

貴社が開発し走査型レーザ型アイウェアは医療機器として開発されたのですか?

それを目指しています。このアイウェアというのはレーザを瞳孔を通して網膜に映像を書き込むものです。細いビームを使って、瞳孔という点を通して網膜にCRTのようにスキャニング(走査)します。特長が2つあります。一つはフリーフォーカス。フリーフォーカスというのは、ピントを調整する能力とか、どこにフォーカスを合わせているかに依らずに同じ画像が見えるということです。違う場所にフォーカスしても変わりなく画像が見えている。また、近視や遠視、また老眼や乱視に関わりなく同じ綺麗な画像が見えます。これを活かして医療機器にしようとしています。もう一つの特長は、フリーフォーカスAR(Augmented Reality)です。実像と網膜に描かれる像を同時に見ることが出来るんです。それは常にフォーカスが移動し続けてもリアル情報とバーチャル情報を同時に受け取れるということ。QDレーザだけがこれの製品化に成功して世界の先端を走っています。

視力に課題のある方でもクリアな映像を見ることが出来る

このアイウェアを使うと完全に目の見えない方が見えるようになる?

いや、原理的には網膜の中心と視神経などが一部でも機能していることが必要です。例えば水晶体や角膜など前眼部と呼ばれるピントをあわせる機能に疾患のある方であれば、デジタル情報を見せることが出来ます。カメラでキャプチャしたものやスマホのアウトプットやPCの画面等見ることが出来ます。細いビームで網膜に画像を描くので、ピントの調整位置に依らないんです。前眼部が調整出来ない人、目が歪んでいる人、曇っている人、前眼部が無い人、全て画像を見ることが出来る。
我々はまず医療から始めたんです。あったらいいな、じゃなくて無いと困るという人たちの力になりたいと思ったんです。そこからはじめることにしました。
もう一つの理由がレーザを網膜に描くというのはすごく世の中的に危険なものだと思われていることです。それを払拭するために正面から取り組んで、医療機器メーカになって、医療機器メーカが当局から承認をもらって発売するなら問題ないですよね、と言いたい。そういう戦略をとっている。QDレーザは第二種医療機器製造販売業の許可を取得しているんです。医療機器を製造して発売することができます。国内の臨床試験は実はもう終わっています。

VRと違って目が疲れない

アイウェアは目の不自由な方への活用以外にどういう可能性を考えていますか?

3つのステップを考えていて、一つは医療系の派生品として検眼機も考えています。目を簡単にスキャンして1分で緑内障を検知出来るような装置を医療機器メーカと連携して共同開発しています。次に、作業支援です。建設機械の方々や警備保障の方々等、またコンテンツビジネスの方々等と一緒にビジネスを検討しているんです。この技術を使うとピントを意識しないでデジタル情報を見ることが出来る。今までの画面やVRなどと違って疲れにくいと思うんです。最後はスマートグラスですね。僕の定義はスマホの画面が網膜に映るということ。スマホから直接つないで有線で表示するのがスマートグラスの一つの形で、そのプロジェクトも既に走っています。

これからVR・ARを学ぼうと考えているエンジニアに応援のメッセージをいただけますか?

やっぱりエンジニアが社会を変えるのは間違いない。是非皆さんに頑張って欲しいと思います。社会は今、本当にエンジニア頼みなので、そういったことをもう一度きちんと認識した上で仕事されるといいと僕は思います。

 

菅原 充 | MITSURU SUGAWARA
1984年、株式会社富士通研究所へ入社。95年に富士通研究所光半導体研究部主任研究員、東京大学工学博士となる。2001年には富士通研究所フォトノベルテクノロジ研究部長04年に東京大学生産技術研究所特任教授に就任。05年から富士通研究所ナノテクノロジー研究センターセンター長代理を務めたのち、06年にQDレーザを立ち上げ、代表取締役社長として現在に至る。

2007/06 内閣総理大臣賞(第5回産学官連携功労者表彰)
2010/10 経済産業大臣賞(グリーンITアワード2010)
2014/10 IEEE Aron Kressel Award
2016/03 第1回 JEITAベンチャー賞
2016/10 CEATEC2016 経済産業大臣賞 米国メディアパネル・イノベーションアワード グランプリ
2016/11 第16回 山﨑貞一賞
2017/02 米展示会Photonic West2017のPRISM AWARDS Winner(日本企業では2社目)
2017/04 WIRED Audi INNOIVATION AWARD 2017
2018/02 第33回 櫻井健二郎氏記念賞
2018/10 日経 xTECH EXPO AWARD 2018 準グランプリ(ウェアラブル賞)

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