VRunner

VRマーケットを牽引するトップランナーのインタビュー誌

現役プロレーサーが何故VR開発を始めたのか

現役プロレーサーが何故VR開発を始めたのか

現役プロレーサーが何故VR開発を始めたのか
レーシングドライバー アイロック 代表取締役
古賀 琢麻

今年、ドライバーとして12年ぶりにNASCARにフル参戦し、アジア人初となる5位入賞。キャリアハイを迎え、ドライバーとしてもさらなる高みに立つ傍ら、ドライビングシミュレーターの開発・販売を行うアイロックの代表として、新たな分野に挑戦し続けている。そんな古賀 琢麻氏にVRの魅力と今後のビジネス展開についてお聞きしました。

VRを使うことでシミュレータにアナログ感が出る

 VRレーシングシミュレーター「T3R」を作ったキッカけはなんですか?

僕、いま40歳を迎える思いっきりファミコン世代で、いわゆるゲーム世代なんですけど、未だにゲームしないんですよ。だけど、レーサーという仕事上、色んなレーシングシミュレーターに乗ってきて、画面の中ではゲーム用に良い走りをするんですけど、それって現実と差があるなと感じたんです。そんなある時、友人のすすめでレーシングシミュレーターに乗ったんですよ。僕たちプロのドライバーってブレーキを踏む〝踏力〞が強いから、大体どのシミュレーターもブレーキだったりハンドルだったりが壊れちゃうんですよね。要はフレームが弱くて。その時、友人に乗せてもらったシミュレーターは走行時の揺れを体感出来ない、タイプのものではあったけど、しっかりと固定してあって「これなら、いいな」って感じたんです。でも、本当に良いシミュレーターを作ろうと思うなら走行時の揺れを体感出来るもので、しかもVRの物が良いなとも思いました。

VRを使うことでアナログ感が出てくる事に気づいてVRに特化したシミュレーターを作ったんですね。もともと、3面のシミュレーターもあったんですけど、それだと恐怖心もないし画面に合わせてゲームだけが上手くなっていくんですよ。それだと実際には役に立たないんですね。そうやって試行錯誤していく中、自分たちの作ったシミュレーターをVR専門家の人たちに、やってもらったんです。そうしたら、「他の物より酔わない」って言ってもらえて、そこでようやく自分達っていい線いってるんだなって気づきました。僕にとってはカーレースが日常だけど、普通の人にとってカーレースって非日常じゃないですか。だから、VRのゲームを作っている人たちは非日常を想像で補うしかないんですね。僕らは日常をVRとして落とし込んでるので、アプローチの仕方が全くの逆なんですよ。現実になるべく合わせるよに開発を進めていて、その差異を埋めることで酔いが軽減したんじゃないのかなって思います。

 

 VR内で車の揺れをどうやって再現しているんですか?

シミュレーションソフトの中で、車が動いた時の重力加速度を計測していて、それをコンバートしてアクチェエーターに動くよう変換しているんです仮想空間上の物理データと現実で一番違うのは、重力がないってこと。要は、物理データ上から重力加速度を取ったとしても現実には1Gかかっているわけだから、それをVRのように目隠しされた過敏な状態でゲーム寄りに作ってしまうと動きがシャープになっちゃうんです。車が曲がる時ってフレームが捻れるし、タイヤと路面は常に擦れてるから、そこを僕が調節しているんですよ。だから、ゲーム感が出ない。今の完成度としては90%くらいで、残りはほとんどHMDのクオリティかな。そのうち、8KのHMDが出てきたら、もう現実との見境がつかない世界になってきますね。

 

VR最大の魅力は近づいていくときの恐怖心

 T3Rを使っているからこそ、出来ることはありますか?

距離感と恐怖心が体験できることですね。まだ、HMDの画像が荒いから加速して、風景が後ろにいくときの速度感が遅いけど。それはHMDのクオリティが上がれば解決できます。VRで最大の見どころって、止まっているものに対して自分が近づいていくときの恐怖心なんですね。お化け屋敷とか、空から地面に落ちるだとか。今、自動車メーカー各社が自動ブレーキを推していて、自動ブレーキをT3Rで体験できるものを作ったんです。一般的な、車のディーラーに行っても自動ブレーキって怖くて体験できないんですね。それを僕たちのT3Rでできるようにしたんです。

 

 

 ドライビングソフト「アセットコルサ」を選んだ理由はなんでしょうか?

アセットコルサはライセンス料を払えば、オリジナルのコースや車両を足していけるんです。だから、VR PARKのような使い方もできるし、そんな拡張性は他にはなかったんです。それにアセットコルサって、元々は自動車の開発ように作られたソフトを一般のゲーム化していて、僕らとアプローチが一緒だったんですよ。

 

数値や映像でアピールしづらい要素をVRを使ってサポートしたい

 新たに東京、上海、ロサンゼルスにショウルームを増やすなど、拡大するT3Rビジネスについてお聞かせください。

経済にとって自動車産業はもっと発展していかなきゃと思っていて、世界中で車を販売する際に自動ブレーキは大きなポイントだと思っています。でも、燃費や車幅などと違って数値や映像ではアピールしずらいのも確かなので、そういった部分をサポートできるのは大きいですね。あとは、自動運転と高齢者ドライバーの問題で、ETCと違って今の車に自動運転を後付することはできないんですよ。今、自動運転の車に乗っているのって一部の富裕層で本当にその技術が必要なのは高齢者なんですね。でも、新たに車を買うわけにもいかないので。そうなってくるとドライバーの運転能力を上げるしかないんです。VRの移動体験車を作って訪問して講習を受けさせれば、それも可能になるんじゃないかと思います。

レーシングドライバー アイロック 代表取締役
古賀 琢麻
愛知県名古屋市生まれ。12歳からレーシングカート活動を開始。2000年度から、NASCARシリーズに参戦。自身が代表を務める株式会社アイロックが、シボレー・コルベットのオフィシャルアップグレードパーツの開発を行っている。




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