VRunner

VRマーケットを牽引するトップランナーのインタビュー誌

”ゲーム”でも”遊園地”でもない新たな「アクティビティ」への挑戦

”ゲーム”でも”遊園地”でもない新たな「アクティビティ」への挑戦

”ゲーム”でも”遊園地”でもない新たな「アクティビティ」への挑戦
バンダイナムコエンターテインメント AM事業部 エグゼクティブプロデューサー
小山 順一朗

日本のVRマーケットを牽引するロケーションベースVR「VR ZONE」の生みの親であり、「VR ZONE SHINJU
KU」アクティビティ開発責任者 小山 順一朗氏 (通称:コヤ所長)にビジネス目線でみたVRマーケットと同施設の開発秘話についてお聞きしました!

VRの魅力を知ってもらうためには、まず体験してもらうことが重要

 2016年にVR施設「VR ZONE Project i can」を展開し、更に今年の7月に「VR ZONE SHINJUKU」として拡大させましたが、そもそもロケーションVRを始めた理由は何でしょうか?

お台場でVR施設をオープンしたのが2016年4月15日なのですが、準備段階の時期はPSVRが発売前で、HTC Viveも発売されていない時期でした。

しかし、僕たちは既に92年に〝バーチャリティ1000〞というHMDを購入して研究をしていたんです。その時からVRの面白さを既にわかっていて、より多くのお客様にVRを知ってもらうためには、まず体験してもらうことが重要だと考えていました。

そのためには、より多くの人に気軽に楽しんでもらう必要があります。僕たちはVRの魅力をストレートに楽しんでもらうには〝身体を使うこと〞、そして〝VR酔いを軽減すること〞が必須条件だと思っています。ナムコ時代から多くの体感ゲームや「機動戦士ガンダム 戦場の絆」というアーケードゲームを10年以上作り続けてきた中で、それらに対するノウハウを持っていました。VRによるエンタメの可能性を最大に発揮するためゴーグル技術にプラスして体感筐体技術を投入し、気軽に体験できるようにするため、ロケーションVRが最適だと考えたのです。

遊園地のアトラクションとは違うVRアクティビティ

 VR ZONEではアトラクションのことを「VRアクティビティ」と呼んでいますがそれには何か理由があるのでしょうか?

VR ZONE を企画している当時、「ロケーションVR」という言葉はありませんでした。その頃は「お店に行ったら遊園地感覚で遊園地レベルの興奮を味わえる施設を作ろう」という話をしていました。しかし、遊園地の〝アトラクション〞は受動的な物が多く、自分から主体的に何かやる様なものは極端に少なかったんです。だから僕たちのコンテンツを〝アトラクション〞と呼ぶのに抵抗がありました。なので「遊園地のアトラクションとは違うよ!」という意味をこめて「VRアクティビティ」と呼んでいるんです。

最初の戦場の絆は宇宙が舞台

11月10日から期間限定で稼働する「戦場の絆」は、何故舞台を宇宙にしたのでしょうか?

アーケード版の戦場の絆は地上戦がベースで、宇宙とはありつつも重力が少し軽くなった程度のもでした。その頃から最初のキックスターターに出す前のDK1を持っていたので、戦場の絆を即移植したんです。「立体視だ!だけど平面だ!」みたいな…でも、ただの「戦場の絆」というだけで、あんまり感動が無かったんです。それに、まだクリアしなければいけない課題も多く、「今のドームスクリーンのままで進めよう」って話しになったんです。もともと、戦場の絆でも宇宙戦をやりたくて挑戦をしていたんですけど、ドームスクリーンで宇宙戦をやるとVR酔いがひどいので止めたんです。

ですが、ちょうどVR ZONEの話を進めていたので、OculusやHTC ViVeを使って宇宙空間を縦横無尽に動ける戦場の絆を作ろうと思い、せっかく新しく作るのだから、ルールもがらりと変えて作ってみました。

現実にある様々な障壁をVRで取り払いたい

「釣りVR GIJIESTA」は、竿を引く感覚や魚を網ですくうインタラクションが非常に心地良い作品でした。また、隣で釣りをしている人とコミュニケーションを取れたり、なにか別の可能性を感じたのですが?

それはToy boxの影響が大きいです。2人のプレイヤーがVR空間で様々な遊びを行うんですけど、それが感動するほど楽しくてパラメーターを表示させないで遊ぶことにたくさんのヒントをもらいました。なので、釣りにもパラメーターを排除して〝いかに本当に釣りをしているか〞に焦点を当てて開発しました。

今までの釣りゲームは魚の引き具合などを全てパラメータに表示するものが多かったのですが、そういった物を全部取っ払いました。その他にもリールには振動モーターを使わず、特別な〝磁性粘性流体〞を使い、まるで生き物が食い付いたかのような振動を再現しています。ある時、車椅子の方が、この「釣りVR」をやられて「僕は、身体の影響で釣りなんて2度と出来ないと思っていたけど、山の中で釣りが出来た」って喜んで下さっていて、心から作って良かったと思いました。だから、他のスポーツも代換えしようとしています。

例えば、スキーにいくと交通費にリフト代にとお金がかかるので、それが、新宿でちゃんとしたものが出来たらいいな…とか。実際の釣りも魚を釣るまではいくつもの障壁があって、それを取っ払えたらいいなと大真面目に思っています。 あとは、夢の世界を再現することです。「あのキャラクターになりたい」とか、「あのメカに乗りたい」とか。だから、ゲームを作ろうという考えは辞めたんです。〝ゲーム〞は攻略してクリアする物だって消費者の意識の中に擦り込まれているので、ゲームって意識を取っ払った〝間〞の世界をつくれないのかなと思っています。

 この先、「ZERO LATENCY VR」のような、複数人同時プレイ可能なVRアクティビティの導入はあるのでしょうか?

実は「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊ARISE Stealth Hounds」が、12月9日より「VR ZONE SHINJUKU」に登場します。チーム対戦型のフィールドVRアクティビティで、プレイヤーは草薙素子が召集した特殊部隊のルーキーとして、テロリスト集団の制圧に参加するという内容です。光学迷彩、義体、電脳化。攻殻機動隊に登場する脅威のテクノロジーを体感することができます。是非、近未来戦闘を「VR ZONE SHINJUKU」で体感してください!

バンダイナムコエンターテインメント AM事業部 エグゼクティブプロデューサー
小山 順一朗
日本大学理工学部卒業後、1990年に株式会社ナムコ(現 バンダイナムコエンターテインメント)入社。メカ技術者として体感ゲームに従事。2015年から、VR関連プロジェクトを主導。日本のVR業界では「コヤ所長」として知られる。

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