VR空間で感情は生まれるのか

VRアカデミー1期生で現在株式会社アタリで働いている河内拓也さんにインタビューを行いました。修了制作として制作した「不審者VR」をはじめ、VRソフト開発に関することを中心に質問をしました。

 

まずはじめに河内さんの経歴を教えてください。

はい。私は中学生の頃にプログラミングを初めて、商業高校の情報処理科を卒業したあと、1年間専門学校に通っていました。その後Web系の会社に就職したのですが、大学が面白そうと感じて退職し、上智大学の社会学部に入学しました。その時は気になる業界がなかったのでITの大きいところで働いてみたいと思いまして、IBMに入社しました。

そこで2年ほど働いたのですが、主に業務がインフラに関する内容だったので形の見えにくい仕事だったんです。そこで目に見える仕事をしたいと考えまして、退職し、NHN PlayArtに転職してゲーム開発に携わりました。しかしその時丁度社内でインフラ部門が分社化することになりまして転属になり、そこで新規事業担当として結局インフラを担当することになりました。そういうこともあってもう一度人に見える仕事をしたいと思って、そのときに盛り上がっているVRを学んで見ようと思い、VRアカデミーに入学し、卒業後、株式会社アタリでエンジニアとして働いています。

修了制作物として「不審者VR」を作ろうと思った理由はなんですか?

不審者VRを作ったのは、1つの可能性の模索として、VR空間上で人がコミュニケーションをしてみたときにちゃんと気持ちが生まれるのか。というのを実験してみたかったというのがあったんです。

もともと大学で学んでいたのが社会学というもので、人が二人以上いる時の人間のあり方について研究する学問をやっていたので興味があったんですね。

VR空間の中でも現実と同じようなコミュニケーション、例えば気になる人に対して声をかけてドキドキしてしまうことだったり、変なことを言ってしまって気まずい雰囲気を味わう。そんなようなことをVR空間上でも体験することが出来ればきっと他のVRでも起きることだと思うので研究の1つとしてやってみたいと思ったのです。

実際にその気持ちを体験することが出来ましたか?

自分が開発しているわけで、探求のために何回も体験するんですよ。何度も繰り返した結果、結局感情が何も生まれてこず、最初は失敗したという感想でした。しかし実際に展示してみて、初体験の人には非常に面白い感覚が得られたとか、単純に面白いと言ってもらえたりしたので、結果としては感情を生み出すことが出来たんじゃないかと思います。

河内さんのような斬新なアイデアはどこからくるものなのでしょうか?

それはやっぱり体験量なんじゃないでしょうか。一時期VRのソフトを5~60本以上体験していた時期がありまして、そういった経験が生きているんだと思います。なんでもそうですが、実際に体験してみないと何が面白くて何がつまらないのかが理解出来ないと思います。

あと、私はアイドルが好きなのですが、最初の頃はアイドルを追いかけている中でVRを通していつでも会える環境があれば非常に便利だと感じていたのです。その時考えていたのがVR握手会で、現実のアイドルの握手会をリアリティを持って出来ないかを考えていたのですが。

現実のアイドルを表現するということになったら、3Dモデルが非常に重要になります。そのとき作ろうとしたときは、そこまでクオリティの高い3Dモデルが無料でも有料でもあまり手に入らない。特に日本人女性に関してはほとんど存在しない状態だったので、それでそのアイドルと握手をするコンテンツをつくってもあんまり意味がないなぁと考えたのです。

じゃぁ何が出来るのかと考えたとき、普通の女性に対して不審者が声をかけるというのは作れるんじゃないかと考えてそっちに落ち着いた形です。

河内さんはそういった企画をたくさん考えて、ほぼ1週間でプロトタイプを作って来られたわけですが、その方法とは何でしょうか?

VRのプロトタイプの作り方は映画に似ているんですけど、まずはどういったシーンを作りたいのか。そしてストーリーですね。そのソフトはどんな人をターゲットにしていて、その人がどんな属性を持っているのかきちんと考えた上で企画を考える必要があります。VRの場合、どうしたらスムーズに没入することが出来るのかを考えながら企画を作りましたね。

例えば不審者VRのときに考えたのは、どうしたらプレイヤーが不審者に成ることが出来るのかについてです。そのとき再現したのは、ビールを飲んだり、上司に対してムカついている状態で、その上で前から女性が歩いてくれば不審者になりきれるのではと考えたのです。

そしてシーンが決まれば実際に夜道を観察しました。コンテンツの中身は「夜道に女性に声をかける」というシチュエーションなので、それが自然に起こりやすい夜道とはどんな雰囲気なのかを様々な夜道を探検してきて調べました。その情報から実際に3Dモデルを選んだりしてステージを作成しました。

また実際の夜の明るさってどんなものなのか。女性の歩き方であったり、人とすれ違う際の視線の動きなどをしっかり観察して、なるべく現実に近くなるように調整しました。

最後は音ですね環境音や足音などは実際に録音して、現実と同じように聞こえるように何度も調整して、忠実に再現出来るように努めました。

アセット素材などの探し方のポイント等はありますか?

個人制作の場合、アセット集めは無いものは無いで妥協するしかないと思います。逆にアセットストアにある素材を基準にストーリーを合わせるほうがやりやすいと思います。また音に関しては実際に録音してしまったほうが早いです。特に日本の場合アニメ系の音が多いのでリアリティを出したいのであれば現実の音を録音するほうが良いと思います。

今現在の職場を選んだ理由についてお聞かせください。

現在はARやAI、センサー類などを使った研究開発とプロダクト開発を中心に働いています。何故今の職場を選んだのかと言うと、当時不審者VRを作っていて強く感じたのが日本には3Dモデルの選択肢が非常に少ないということです。実際にモデルを作るとなるとお金がかかってしまい、結局そこが凄いボトルネックになってしまっているんですね。そんなときにアタリにお邪魔させて頂いた際、そういった3Dモデルを作るということにフォーカスしていきたいという社長の方針を聞き、また広告会社の受託開発等もしているので、より人に魅せられる。楽しい作品。新しい作品が作っていけそうだと感じまして、そんな関係で入社させていただいています。

最後にVRを学びたい、作ってみたい方たちに向けて応援のメッセージをお願いします。

VRを作るというスキル自体は簡単に出来るようになると思います。あとはどこまで妄想出来るかだと思います。自分の作りたい作品のビジョンを明確にすることで、学ばなければいけない技術がわかったり、その技術が伸びることで更に作りたいモチベーションが上がっていくと思います。

しかし一つだけ注意があります。VRのゲームや市場で起こりがちなんですけど、この業界は職人的に作る人が結構多い気がします。それだと複数人で開発するための方法とか、きれいなコードの書き方が分からないままだったりします。もしVRアカデミーに入学した場合は、チームで開発するカリキュラムがありますので、そのときにコードを見せ合ったり、講師の方に書き方について相談するなどして、コーディングの技術を高めて欲しいですね。

頑張ってください!




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